研究会「日本における「難民」受入れをめぐる規範意識のこれまでとこれから – 難民条約以前の「難民」の取扱いから考える – 」報告

研究会

難民研究フォーラムメンバーとのクローズド研究会を、下記の通り開催しました。

日本における「難民」受入れをめぐる規範意識のこれまでとこれから 
―難民条約以前の「難民」の取扱いから考える―
報告者:小畑郁(名古屋大学)

開催日:2022年4月8日(金)
オンラインでのウェビナー形式にて開催

日本の難民認定率が、いわゆる先進諸国と比較して顕著に低い理由については、難民条約の解釈や難民認定審査の制度的な課題が繰り返し指摘されてきました。それにもかかわらず、日本の難民を取り巻く状況が好転していない背景には何があるのでしょうか。

本研究会にお迎えした小畑郁氏は、日本における「難民に向き合う規範意識」に着目し、その規範意識がどのように形成されてきたのかを検討しています。

小畑氏の報告によれば、この問題は少なくとも、日本が難民条約に加入する契機になったといわれるインドシナ難民問題よりもさらに前に日本が直面してきた、朝鮮人「密航者」問題や韓国難民問題まで遡ります。小畑氏は、「(実質的に)国籍国の保護を喪失している」状態にあったにも関わらず、難民を生み出す構造への不理解と政府間友好関係への配慮を理由に、法的救済を否認する・否認してよいという規範意識が形成され、その規範意識が現在まで持ち越されている。そして、この規範意識こそが日本の極端に低い難民認定率に影響していると述べました。

また、日本がいかに在日コリアンの方に対する理解が不十分であるか、日本の過去の帝国主義がどのように難民を生み出す構造に影響を与えているかについても詳しく触れ、今後これらの歴史に自覚的にならなければならないと指摘しました。その上で、日本の難民問題を解決していくためには、「『世界の構造の中に母国とのつながりを失ってしまう人が存在する。そのような歴史の上に我々がいる』ということをもう一度考え直す必要がある。その意味で、規範意識を鍛え直す必要がある。」と結び、報告を終えました。

質疑応答では、行政法学、憲法学、社会学などさまざまな視点からの質問がなされ、日本の難民受け入れの規範意識について、過去と現在の対話を通して未来を据えた議論をしていくための討議がなされました。ジェファーソンから引用した新たな規範意識とする主張に関してなされた質問に対して、小畑氏は「地球上のどこかに住む権利を認めないという公共性はありえない」のではないかと「国籍国の保護の喪失」を用いた図表も示し、現在の国際法のみに準拠しただけでは普遍的な解決に至らない課題があることへの提起をしました。多角的な議論を通し、規範意識に関する重要な論点や未来に向けた課題が提示されました。

報告書と発表資料については、以下をご覧ください。

◉報告書

◉発表資料

 レジュメ ▷ PDF

※本研究会の議論は、『難民研究ジャーナル』第11号(特集:難民保護再考)に掲載された同名論文の議論をもとに行われています。そちらも併せてご覧ください。

◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。

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