第13回若手難民研究者奨励賞 講評

若手難民研究者奨励賞

文責 第13回若手難民研究者奨励賞 審査委員長 人見泰弘

1.申請者

本年度の申請者数は8名であった。前年に引き続き関東及び関西に限らず、東海・九州からの応募があったほか、海外応募も複数申請があった。また大学以外の研究機関、海外で活動する実務家からの応募もあった。

申請者の応募時のポジションは、大学院生4名、特任研究員などが3名、その他が1名であり、いずれも本奨励賞が対象とする若手研究者からの応募であった。応募者には博士号取得者1名が含まれている。応募書類に記載された申請者の専門領域は、応募順に社会学、ミャンマー地域研究、地域創成、国際社会学/移民・難民研究/共生社会研究、植民地文学/戦争文学/難民文学、難民研究/地域研究、非正規移住/国境の外部化、国際人権法となり、これまで申請がなかった学問分野を含む幅広い領域からの応募があった。

2.選考方法

選考は規定の通り、個別審査と全体審査の二段階審査で行った。まず各委員が個別審査を実施し、個別審査票を提出した。個別審査では、審査基準に基づき各項目で得点及び順位をつけるとともに研究計画の評価できる点及び課題点を付し、これらを審査委員長が取りまとめた。なお、審査委員と利害関係が認められる応募者1名があった。選考規定に基づき、当該応募者の審査では、審査委員は審議を退出し、当該応募者の審査に加わらず、残りの委員によって審査を実施した。審議は若手性の点数が高い応募者から順に行った。若手性とは、若手研究者を積極的に奨励する本奨励賞の趣旨をふまえ、研究を継続するための基盤(ポジションや研究資金など)が充分に確立できていない応募者、研究業績が少ない応募者が高いポイントを得るように設定された指標であり、応募書類に基づき算出した点数を用いている。

審査委員会は5月21日(水)にZoomを用いたオンライン形式で実施した。厳正な審査の結果、下記3名を選出した。

3.選考理由・選考基準

難民研究・強制移動研究等の発展に資する研究成果が充分に期待でき、期日までに成果論文の提出が見込まれる者を選考した。

4.受賞者と授賞理由(申請順)

澁谷理子(しぶや りこ SHIBUYA, Riko)

東京大学大学院人文社会系研究科社会学研究室博士課程(社会学)
「不安定な在留資格を持つ難民申請者の日本への滞在戦略と難民申請の捉え方」

授賞理由:難民認定制度の枠組みにとらわれず、その外側に広がる難民状態に置かれた人々の実態を解き明かす、日本の難民政策への重要な示唆が提供できる研究と評価された。研究計画の実現性も高く、着実な成果が期待できる。

古川 優(ふるかわ ゆう FURUKAWA, Yu)

所属なし(非正規移住/国境の外部化)
「アメリカにおけるアジア系非正規移民と強制送還の不完全性:予測可能性と不確実性の交錯」

授賞理由:非正規移民の強制送還をめぐる、追放可能性の多層的構造を明らかにする学術的意義の高い研究と評価された。米国におけるアジア系移民に着目することから、ラテンアメリカ系に焦点があてられがちな米国の非正規移民に関する議論を相対化しうる点からも高い期待を集めた。

波多野綾子(はたの あやこ HATANO, Ayako)

オックスフォード大学大学院博士課程(国際人権法)
「国際人権法におけるノン・ルフルマン原則の国内的実施に関する考察:個人通報案件を題材にして」

授賞理由:個人通報制度に着目し、国際法におけるノン・ルフルマン原則について同制度から発出した見解が国内で遵守されるまでの過程の解明を目指す研究計画である。難民や庇護申請者に対してノン・ルフルマン原則が適切に遵守されない事案が顕著となっているなか、本研究は学術的及び実務的な観点からも高い評価を得た。

以上

*第13回若手難民研究者奨励賞の募集要項はこちらからご覧いただけます。

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