研究会「帰還を考えるーアフリカ・ソマリア難民の『自発的帰還』の実践を中心にー」報告

研究会

難民研究フォーラムでは難民の帰還についての研究会を行いました。

開催日:2024年3月5日(火)、ウェビナー
報告者:杉木明子(専門:国際関係論、国際政治、現代アフリカ政治/慶應義塾大学教授)
主な業績に、Repatriation, Insecurity and Peace: A Case Study of Rwandan Refugees, Springer, 2020 (eds.)、『国際的難民保護と負担分担―新たな難民政策の可能性を求めて』法律文化社、2018年(単著)など。また、帰還に関連する論文として、「アフリカにおける難民の帰還と国際難民レジームの変容―ソマリア難民の帰還から―」アフリカ・レポート 61巻、2023年、71~80頁や、「アフリカにおける強制移動民と「混合移動」-ソマリアの事例から」国際問題、No.662、2017年、25-37頁などがある。

難民の意思と、再統合のための支援や環境整備、難民出身国の政治・経済・社会状況に根源的に対処しない限り帰還は成功し得ない
ーー杉木明子氏(報告書より抜粋)

紛争や迫害などにより強制的に住む場所を追われた人々にとって、かれらの出身国への「帰還」は望ましいことであると考えられています。実際に「帰還」はUNHCRが提示する難民問題の恒久的解決の一つとされ、帰還事業は様々な国や地域でも実施されてきました。

しかしながら、出身国への「帰還」は難民にとって常に最善の解決策だと言えるでしょうか。長期化する難民状態におかれた人びとの数も増加するなかで「難民問題」は複雑化しています。すでに避難先の国での生活の方が長くなっている難民や、避難先で生まれた2世、3世も少なくありません。

今回の報告ではこうした状況を踏まえ、実際に帰還したソマリア難民の自発的帰還事業を中心に現地での調査および庇護国の政策や出身国の実態について発表をいただきました。

また、実施した「帰還」の持続可能性(Sustainability)について、一度帰還した難民が、出身国の不安定な情勢、すなわち安全性が十分に確保できない状況や、出身国での社会統合が進まないことなどによる再難民化が起こらないためにはどのような方策が必要なのかについても、現地調査やこれまでの帰還や安全保障の研究等をもとに報告をいただきました。

杉木氏による報告後、参加者との間で難民の帰還について、国家という政治的主体だけではなく、国際機関や市民社会組織など国際社会における様々な立場から包括的な解決に向けたアプローチについての意見交換を行いました。

報告の冒頭で杉木氏は、「難民問題」という言葉は二つの点を含意していると指摘しています。一つは強制移動を強いられた当事者が直面するミクロな視点の「難民の問題」、そして二つ目は、受入国や送出国が直面するマクロな視点の「難民問題」です。その上で同氏は以下のように話し、改めて難民の安全と尊厳を保ちつつこの問題の解決を目指すアプローチが必要であることを強調しています。

帰還でこれまで重要視されてきたのは、『難民問題の解決』であり、『難民の問題』の解決ではなかった。帰還が難民問題の解決であるという前提を、まず捨てることが必要ではないか。それを踏まえ、帰還にともなうリスクと、帰還難民のチャレンジに対する配慮をしていかなくてはいけない」。

報告書と発表資料は、以下をご覧ください。

◉報告書

◉発表資料 ▷ PDF

◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。

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