2014年6月7日『アジア(フィリピン、韓国)における新たな難民法制度の動きと日本の今後』開催報告(2/2)

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《第一部》「第一回若手難民研究者奨励賞」受賞者による研究成果報告   

 

・難民の地位に関する条約第33条2項をめぐる国際法の理論:庇護とsurrogacyの視点からの検討/加藤雄大(東北大学法学研究科)

 

・移動する人々と第三国定住制度:難民の行き先が日本になるとき/三浦純子(東京大学総合文化研究科・日本学術振興会特別研究員)

 2010年より始まった日本の第三国定住制度の対象となるミャンマー難民が庇護されるタイのキャンプで調査を行い、日本が他国に比べ候補地として選ばれにくい理由を分析。その理由として、1.歴史背景の捉え方によって肯定的・否定的イメージが混在する、2.難民同士のネットワークが小規模、3.2005年の難民登録の停止によりそれ以降に難民として来た人々が第三国定住の申請ができない、ことを挙げ、実地調査に基づいた難民の現状が報告されました。

 

・ソマリランドとソマリランド・ディアスポラ:国境を越えて展開されるダイナミズムを捉える試みから/須永修枝(東京大学総合文化研究科)

ソマリランドの成立や国家の発展について言及する際のディアスポラの重要性についての調査報告。イギリスロンドンで行われたディアスポラに対するインタビュー調査からは、ディアスポラがその資金力のためにソマリランドにおける開発・政治に対し大きな影響力を持ち、さらにはアイデンティティーの関わりから国家承認のための活動を主動していることが、その重要性の根拠としてあげられるとの考察がされました。

・就労現場におけるベトナム難民の受け入れと町工場が果たした役割に関する一考察:兵庫県姫路市・神戸市長田を事例に/瀬戸徐映里奈(京都大学農学研究科)・野上恵美(神戸大学国際文化学研究科)

 

《第二部》

1.基調講演: ブライアン・バーバー (アジア太平洋難民の権利ネットワーク(APRRN)リーガルエイド/アドボカシー分科会議長)

アジア太平洋地域の難民保護の現状を、各国が抱える問題点を踏まえて考察し、法的保護と法律の実行の重要性を話されました。そして、日本や韓国、フィリピンがロールモデルとなることの意義を踏まえ、必要とされる取り組み、地域間、市民社会同士、そして政府や国際機関とが協力し、さらなる法改正や包括的保護が求められると話されました。

 

2.発表・パネルディスカッション

フィリピン:無国籍者の状況と難民・無国籍認定制度の導入/付月(茨城大学准教授、無国籍ネットワーク)

フィリピンにおける無国籍者保護について、1940年に法律上では無国籍認定が認められてきた先進的法律的取り組みの歴史的背景と、その一方で実務においては、近年になってようやく調査・把握され始めた無国籍者の状況と保護の現状を考察されました。そして、日本の難民保護制度への示唆として、無国籍条約への加盟が難民保護の向上につながると話されました。

韓国:難民法の制定、難民支援センターの開設、そして第三国定住難民受け入れへの動き/松岡佳奈子(難民研究フォーラム事務局・研究員)

韓国における難民の現状と、アジアで初めての試みとなる独立した難民法制度の制定経緯と概要が説明されました。また、去年開設された難民センターについても、日本との比較も交え紹介され、さらに今後の難民制度の展望として、第三国定住受入れに向けた動きなど、人権先進国家を目指す韓国の取り組みを話されました。

 

日本:難民認定制度の現状と課題/難波満(弁護士)

難民申請に関わる実務家の観点から、年々厳しくなる日本の難民認定の現状が話されました。具体的な事例を通して、難民申請者がおかれる厳しい環境が話されたほか、日本の法制度の問題点が、異議・収容・生活保障の側面から多角的かつ詳細に解説され、難民保護の抱える課題が共有されました。

 

ゲストパネリスト:ヨンビ・トナ(韓国光州大学専任助教、韓国での難民認定者)

難民としての経験を、ユーモアを含めてお話されつつも、難民認定の障害となる制度的問題点や、難民に対する偏見など、難民の視点でお話しされました。さらには、日本を含めた先進国が難民を生み出す途上国に対してもつ影響力を強調され、難民に対して力をかしてほしいとお話しされました。

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