難民研究フォーラムメンバーによるクローズド研究会を、下記の通り開催しました。
研究会の発表をまとめ、報告書を作成しました。また、発表資料も報告者から掲載許可をいただいておりますので、ご覧ください。
「収容が被収容者と家族のメンタルヘルスに及ぼす影響と『監理措置』の課題」
報告者:市川政雄(筑波大学)、鈴木雅子(弁護士)
開催日:2021年4月19日(月)
オンラインでのウェビナー形式にて開催
日本の出入国在留管理庁(以下、入管)による外国人の収容は、国際法が禁止する「恣意的拘禁」にあたると国際社会から批判があり、収容の長期化や仮放免の厳格化、収容施設での死亡事故などが問題となっています。法務大臣の私的懇談会のもとに、2019年10月に設置された「収容・送還に関する専門部会」では、収容の長期化解消や送還の促進に関する議論が行われ、2020年6月に報告書が提出されました。
政府は、専門部会の報告書を受け、収容に代わる「監理措置」の創設・被収容者の処遇に関する規定の整備・仮放免の在り方の見直しなどを盛り込んだ入管法改正法案を本国会1に提出しました。しかし、この改正案に関しては、国連難民高等弁務官事務所より、「非常に重大な懸念」が表明されるなど、多くの課題や懸念点が指摘されています。本研究会では、日本の収容制度の整理と改正案のポイントについて整理した上で、2名の専門家から報告をいただき、外国人の収容問題に関して議論しました2。
市川政雄氏からは、「親の収容経験と子どもの『心の健康度』」と題し、収容が被収容者とその家族のメンタルヘルスに与える影響について報告されました。市川氏が2006年に行った共同研究を含め、収容が被収容者のメンタルヘルスに悪影響を与えることは、多数の調査によって明らかにされています。本研究会では、量的調査の手法を用いて、収容がメンタルヘルスに与える影響を分析する手法に関して説明されました。
また、市川氏が2020年に行った調査結果をもとに、収容は被収容者だけでなく、被収容者の子どものメンタルヘルスに悪影響を与えるとの指摘がなされました。この研究成果に基づき、日本の入管政策において、子どもの人権に配慮したものにすることが提言されました(詳しくは、論文を参照。)
鈴木雅子氏からは、「『監理措置』の課題」と題し、収容に関して、法律家の視点から報告が行われました。報告では、国際法に照らして、収容をどのように考えるかという点だけでなく、政府提出法案で提案されている「監理措置」の具体的な問題点が指摘されました。鈴木氏によれば、「監理措置」は、拷問禁止委員会や人種差別撤廃委員会等の条約機関から長年にわたり繰り返し勧告されている「全件収容主義」ありきの考え方であるとのことです。仮に、政府の提案通り「監理措置」が導入された場合、改題である長期収容の解消に繋がらない可能性があるばかりか、かえって被収容者の身体拘束を解くハードルが高くなる懸念が指摘されました。
本研究会には、研究者や実務家、マスメディアの方など40名(事務局含む)が参加しました。質疑応答では、研究者・実務家からより深い内容について議論がなされ、現在の収容や人権の保障について様々な論点が提示されました。
◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。
—