カナダ移民・難民委員会「ガイドライン9:性的指向、ジェンダー・アイデンティティとジェンダー表現に関連するIRBでの手続き」

資料集

世界における難民認定審査にかかわる先駆的な取り組みを紹介することを目的に、難民研究フォーラムでは、カナダ移民・難民委員会(The Immigration and Refugee Boardof Canada(IRB))が公開している「ガイドライン9:性的指向、ジェンダー・アイデンティティとジェンダー表現に関連するIRBでの手続き」(Guideline 9: Proceedings before the IRB Involving Sexual Orientation and Gender Identity and Expression)の翻訳を作成しました

本ガイドラインは、IRBで難民認定審査などに関わる審査官(Decision-Maker)やそれをサポートする担当官およびIRBに所属するすべての職員のための指針として提供されているChairperson’s guidelinesの1つであり、主にカナダにおいて蓄積されてきた審査実務・研究の知見、判例をもとに作成されています。

2017年5月に施行された本ガイドラインは、約2年後の2019年春には適用状況およびその方法を評価するレビューが実施され、それに基づいて勧告が行われました。その結果を踏まえて、2021年12月に本ガイドラインが改訂されています。

ガイドラインの冒頭にも記載されているとおり、セクシュアルマイノリティの人々には、かれらが難民認定申請を行い、申請理由などを主張する際に直面し得る特殊な課題が重層的に存在しています。これらの課題への理解が不十分なまま審査を行った場合、判断を誤る危険性、保護すべき申請者を不認定にしてしまうリスクに繋がる可能性があります。こうしたリスクを軽減し回避するためには、難民認定審査に関わる審査官や職員がセクシュアルマイノリティの難民申請者が抱える困難について理解を深めることが重要です。

本ガイドラインはカナダの難民認定審査における指針として作成されたものですが、カナダのドメスティックな難民条約の解釈を示すものではなく、セクシュアルマイノリティの申請者の難民認定審査において、審査に関わる人々が陥りやすいステレオタイプや注意点などを具体的に示したものです。そのため、本ガイドラインは各国の難民認定に関する法制度の差異を超えて、性的指向やジェンダー・アイデンティティ、ジェンダー表現に基づく難民申請の審査に広く適用可能であると考えられます。

難民認定審査に関わる方をはじめ、研究者や実務家の方にも広くご活用いただきたいと考えています。

※翻訳は、難民研究フォーラム作成の仮訳です。正文はIRBのウェブサイトをご覧ください。https://irb.gc.ca/en/legal-policy/policies/Pages/GuideDir09.aspx#a1

※『難民研究ジャーナル』第12号では、「難民・強制移動とジェンダー/セクシュアリティ」を特集しています。この分野の専門家であるモイラ・ダスティン(Moira Dustin)氏とヌノ・フェレイラ(Nuno Ferreira)氏による本ガイドラインのレビュー( “Canada’s Guideline 9: Improving SOGIE Claims Assessment?”)の翻訳のほか、この特集に寄せられた2本の論文と報告が収録されておりますので、ぜひご一読ください。 

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