難民研究フォーラムメンバーによるクローズド研究会を、下記の通り開催しました。
研究会の発表をまとめ、報告書を作成しました。また、発表資料も報告者から掲載許可をいただいておりますので、ご覧ください。
「補完的保護を考える~日本での導入に向けて~」
報告者:安藤由香里(大阪大学)
日時:2020年11月27日(金)17:30~19:30
オンラインでのウェビナー形式にて開催
(情報保護のため写真を一部加工しています)
2021年2月現在、政府が検討している入管法改正案には、補完的保護の創設が含まれていると言われています。これは法務大臣の私的懇談会である第7次出入国管理政策懇談会「収容と送還に関する専門部会」が2020年6月に行った提言によるものです。同専門部会はその提言の中で、2014年12月に発表された第6次出入国管理政策懇談会「難民認定制度に関する専門部会」における『難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)』の提言を踏まえた施策の実施を求めています。
2014年の「難民認定制度に関する専門部会」においては、難民該当性に係る認定基準の明確化と並んで、「難民条約上の難民とは認められないものの国際的に保護の必要がある者に対して在留許可を付与するための新たな枠組みの創設」が提言されていました。そこからすでに6年近くが経過していますが、「難民認定制度に関する専門部会」の提言に沿った形で補完的保護の枠組みが創設されることになれば、日本における国際的保護のあり方の改善につながることが期待されます。
しかし、保護対象が国際的な規範に沿ったものとなるか、適切な審査や出身国情報の分析が行われるかといった懸念も、支援団体や弁護士会から表明されています。
本研究会では、2021年の通常国会と言われている入管法改正案の提出を前に、国際的な動向や諸外国・地域での実践を通じて、補完的保護のあるべき姿を議論しました。まず、難民支援協会の赤阪むつみ氏より、「日本での補完的保護に関する議論と展望」と題して、日本の難民受け入れに関して、特に人道配慮の変遷に着目した報告が行われました。また、「難民認定制度に関する専門部会」と「収容と送還に関する専門部会」による提言を整理し、議論の土台となる情報が提供されました。
次に、安藤由香里氏から、「補完的保護に関する国際的な動向報告」と題し、国際人権条約に照らして「補完的保護とはなにか」という点について報告が行われました。各国の補完的保護を整理し、国際的動向としては保護の射程範囲が広がっていることが示されました。日本においても補完的保護の新設にあたっては自由権規約6条・7条を明記することなど、具体的な提言も行われました。
国内の各地域や海外在住のメンバー34名(事務局スタッフ含む)が参加し、ディスカッションでは、研究者・実務家から補完的保護に関してプラクティカルな質問・意見が寄せられました。それぞれの視点からのディスカッションを経て、日本において補完的保護を新設するにあたり、重要な論点や課題が提示されました。
◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
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