ヒラリー・エヴァンス・キャメロン「難民認定審査と記憶の限界」全訳掲載

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2024/12/26更新:PDFに翻訳免責事項の記載を追加しました。ご利用にあたっては、記載のあるものをご使用ください。

ヒラリー・エヴァンス・キャメロン氏の論文「難民認定審査と記憶の限界」を日本語訳し、期間限定で掲載します。(Hilary Evas Cameron, “Refugee Status Determinations and the Limits of Memory,” International Journal of Refugee Law vol. 22. no.4, 2010, pp. 469-511.)

「難民の地位の決定は、記憶力テストに基づいてなされるべきではない1
“A refugee claim should not be determined on the basis of a memory test”

難民認定審査において、申請者の供述の信憑性評価は極めて重要な要素です。日本の実務では、供述の変遷や事実関係の不一致などが極端に厳しく評価され、難民の供述が信頼に足るものではないと評価された不認定事例が少なくありません。
しかし、本論文でキャメロン氏が指摘する通り、人間の記憶とは固定的で安定的なものではなく、むしろ時間の経過とともに変容するものです。

キャメロン氏は、認知心理学をはじめとする豊富な先行研究をひも解き、人間の記憶に関する知見を幅広く提示したうえで、カナダの難民認定審査にかかわる判例を分析し、難民認定の判断者が抱える記憶に関する思い込みを明らかにしています。

本論文は、人間の記憶に関する誤解から、「記憶力テスト」によって信憑性を判断してしまうことのリスクを認知心理学の知見と実際の判例から示している点で実務的な観点からも非常に重要な論文です2

難民認定審査における信憑性評価の誤りは、難民として保護されるべき人を誤って不認定とし、迫害や深刻な人権侵害を受けるおそれのある国に送還してしまう危険性があります。

記憶に対する誤解に基づき誤った判断が下されることがないよう、本論文が日本の難民認定審査にかかわる人に広く読まれることを望みます。

※本論文の全訳は掲載から1年間のみの限定公開です。2025年12月21日以降は、アクセスできませんのでご注意ください。
※本論文の翻訳は、RAFIQ翻訳チームにご提供いただいた訳文をもとに、難民研究フォーラムが作成しています。原文は以下をご覧ください
https://academic.oup.com/ijrl/article-abstract/22/4/469/1520136

当フォーラムでは、ヒラリー・エヴァンス・キャメロン氏をお招きし、研究会を開催しました。報告書や発表資料もご覧いただけます。
(「難民認定審査における信憑性評価」(2023年2月7日)

  1. Sheikh v. Canada (Minister of Citizenship and Immigration) [2000] FCJ No. 568 at para. 28 (Federal Court of Canada).[]
  2. 本論文は、UNHCRが発行する『BEYOND PROOー‐EU庇護制度における信憑性評価』第3章「信憑性評価集学的アプローチ」、第4章「事実の収集」において人間の記憶への限界や変容する事実をはじめ、供述の信憑性を判断する者が不合理な期待を持たないよう慎重でいなければならない合理的根拠として、頻繁に引用されている。UNHCR駐日事務所『BEYOND PROOFーEU庇護制度における信憑性評価』2015年[https://www.unhcr.org/jp/wp-content/uploads/sites/34/2018/07/Beyond_Proof_Full_JPN-2nd-edition.pdf[]
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