第9回若手難民研究者奨励賞 講評

応募状況

 本年は新規申請者6人、再申請者1人、合計7人の申請があった。応募者は首都圏と京阪神を中心として、カナダも1件の応募があった。新規申請者のうち大学院生3人、ポストドクターもしくは研究員2人、常勤研究者が1人で、再申請者は大学院生であった。各申請者の専門分野は申請順に、社会福祉学、国際関係法学・国際人権論・現代アフリカ政治、タイ地域研究、アフリカ地域研究・人類学・難民研究、国際社会学、社会学、国際関係論であった。研究対象とする地域は、日本、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパであった。

選考過程

 選考にあたっては、研究・専門分野が異なる研究者4人と実務者1人から構成される5人の選考委員を選任した。審査は、(1)選考委員による個別審査と、(2)選考委員会での協議の2段階で進められた。申請研究計画書と提出された論文等から、難民研究に寄与する成果論文や報告の提出見込みが高い者を選出した。また提出された申請研究計画に対する新規性や調査研究の実現可能性と具体性についても協議した。
 すべての申請者について課題や弱点が提示されたが、それらの課題を乗り越えることができると思われる申請者を授賞者として内定した。今回は、特に研究の具体性がない者や研究の分析枠組みが定かではない者は内定には至らなかった。日本における難民研究を深め、積極的に発信していく趣旨から、『難民研究ジャーナル』に掲載される論文の質を高めることを意識する必要があるということも考慮した。選考委員会の討議の結果、新規申請者2人を内定者として選出した。

全体講評

 コロナ禍ということもあり海外渡航ができない場合の代替案を提示した研究計画が複数みられた。今回残念ならが授賞とならなかった研究計画として、次のようなものがあった。アフリカ地域を対象としたものは、研究の着眼点はよいものの海外の調査と代替となる日本の調査の乖離が大きく、それを埋めるだけでの理論的枠組みが提示されていないと判断された。
 また東南アジア地域を対象とする研究計画では、オンライン調査を立案していたものの既存の研究(修士論文)からの発展と分析の枠組みがないと評価された。実務者向けのワークショップを立案した研究は、着眼点は興味深いものの研究計画に具体性がないことが惜しまれた。難民の就労に着目した研究は、その重要性については疑う余地はないものの、先行研究が蓄積されている研究分野であり、理論構築の研磨を図って欲しいこと、今後に期待したいと評価された。授賞者および授賞理由は以下の通り。

受賞者(申請順)

名前:藤井広重(フジイ ヒロシゲ FUJII, Hiroshige)

専門分野・キーワード:国際関係法学、国際人権論、現代アフリカ政治
所属:宇都宮大学地域創生科学研究科・国際学部 助教
研究テーマ:「国際刑事裁判での証人保護と難民条約除外条項の適用をめぐる課題:国際刑事法と国際難民法との調和に向けて」

授賞理由:難民条約除外条項の適⽤にかかる課題を示す事例研究として、一定の意義があること、事例をとおして国際社会がいかに該当する人物を保護するかという問いにつながり得るものである。あわせて申請者が専門とする国際刑事法の分野の視点を経て、難⺠研究を深化させることを期待して授賞に至った。

名前:梁 英聖(リャン ヨンソン RYANG Yong-Song)

専門分野・キーワード:社会学、在日コリアン、シティズンシップ、レイシズム、新自由主義
所属:一橋大学大学院言語社会研究科特別研究員
研究テーマ:「難民条約の人権規範と1952年体制のレイシズムとの相克をめぐる一考察」

授賞理由:今国会で提案された入管法改正案でも議論の一つとなった1952年体制から難民行政を捉え直す視点を評価した。難民条約加入の経緯については外圧論が常識とされることに対して、日本国内の入国管理体制や行政的な側面から法としての機能や法の性質を明らかにしようとする点を評価した。他の研究領域と難民研究を架橋することを期待して授賞者とした。

以上

*第9回若手難民研究者奨励賞の募集要項はこちらからご覧いただけます。

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