難民研究フォーラムは、難民を対象とする調査・研究を実施するにあたって、必要な倫理的配慮に関する情報を提供する目的で、「難民を対象とした調査・研究における倫理的配慮に関する提案」を作成しました。
万が一にも調査に参加する難民に予期せぬ不利益や危害をもたらすことがないように、研究計画の策定、調査の実施段階、研究結果の公表など各段階において配慮をするべきポイントを確認する際の参考にしてください。チェックリストを掲載しておりますので、理解度の確認のためにご活用ください。
作成にあたっては、難民をはじめ、脆弱な立場に置かれている人に対する調査経験が豊富な研究者の方々からコメントをいただき、反映させています。有益な助言をいただきましたことに記して、感謝申し上げます。
「難民を対象とした調査・研究における倫理的配慮に関する提案」
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「人を対象とする調査・研究」においては、インフォームドコンセントや個人情報保護の重要性をはじめ、研究参加者に何らかの不利益や危害を与えることがないよう、様々な倫理指針や行動原則が策定されています。また、研究機関や学会においては倫理審査委員会の設置をはじめ、研究倫理を担保するための仕組み作りが進められています。難民を対象とする調査・研究においても、こうした一般的な研究倫理を遵守することは極めて重要です。
そのうえで、難民を対象とする場合は、人を対象とする調査・研究で一般的に求められる倫理的配慮に加えて、更なる注意や理解と配慮が必要になることがあります。その理由として、難民は出身国での迫害や深刻な人権侵害を受けるおそれから逃れて、他国に庇護を求めているという特殊な状況にあることなどが挙げられます。
難民を対象とした調査・研究にあたっては、一般的な調査倫理に加えて、難民を取り巻く状況や研究結果の公表によるリスクなどに対する理解が欠かせません。調査の計画時や調査実施時において、研究参加者に不利益や危害を及ぼすことがないように留意するとともに、調査結果の公表にあたっては、公表する情報が難民の個人の特定に結びつくことがないかなどを、事前に検証することが望ましいと考えます。
難民研究フォーラムでは、難民を対象に調査・研究を実施する調査実施者が事前に知っておくべきポイントを整理しました。この提案書は、難民研究フォーラムが知見を有する日本の状況をもとに作成したため、調査国によっては状況が異なる場合も考えられます。調査を実施する国の状況に合わせて、研究参加者の保護のための対策を検討することが重要ですが、共通するポイントも多く含まれているため、参考にしてください。
難民への関心から行われた調査・研究が、研究参加者の不利益に繋がることは、調査者も望んでいないと考えます。これから調査・研究を始めたいと考えている方には、この提案書を事前にご一読いただき、どのようなポイントに配慮をする必要があるかを確認していただければと思います。研究参加者の安全を確保したうえで、より良い調査・研究を行うために役立てていただけることを期待しています。