難民研究フォーラムでは下記のとおり研究会を行いました。
開催日:2024年6月24日(月)ウェビナー
報告者:飯尾真貴子(専門:国際社会学、国際移動研究、移民政策論、境界研究/一橋大学大学院専任講師)
主な業績に、「米国移民規制の厳格化がもたらす越境的な規律装置としてのトランスナショナル・コミュニティ : メキシコ南部村落出身の移民の経験に着目して 」『ソシオロジ』 65(3) 2021年。「非正規移民1150万人の排除と包摂―強制送還レジームとDACAプログラム 移民受入の国際社会学―選別メカニズムの比較分析 」『移民受入の国際社会学』第2章、2017年、他多数。
国境管理の厳格化、あるいは境界管理の厳格化が移民とその家族自体をむしばむような法的暴力として作用することを強調したい。親密な社会関係にもたらす様々な困難が今回紹介した事例の中から伝わることを願っている。そして第二世代の若者たち、いわゆるアメリカ生まれの子どもたちの社会統合において、長期的に甚大な負の影響を及ぼし続けている。家族の結合という本来リベラルな民主主義国家の下で保障されるべき権利が、こうした法制度のもとで侵害されているという事実をどう考えるのかについて、この論文を通じて読者に提起し、共に考えていきたい。
ーー飯尾真貴子氏(報告書より抜粋)
日本における難民申請者の送還を可能にする法改正をはじめ、各国で国境管理政策の厳格化が進む中で、強制送還は難民・強制移動等に関心を持つ研究者、実務家の間でも注目を集めています。しかし、こうした政策を批判する立場においても、外国人の強制送還そのものは国家の国境管理に基づく当然の権限としてみなされていることは少なくありません。
従来の難民・強制移動研究の「強制性」の射程には、強制送還における「強制性」は等閑視されてきたことが指摘をされています。強制送還における「本人の意志に反して移動を強いる行為」を、難民・強制移動研究に通底する「強制性」のなかで捉えなおすことが求められているのではないでしょうか。
このような課題意識を背景に、本研究会では、国際移動研究、移民政策論、境界研究の視点から長年、米墨国境における国境管理政策と法的に正当化された境界の外へ排除される人々に着目をして研究を続けている飯尾真貴子氏にご報告いただきました。
『難民研究ジャーナル』第13号 (特集:難民と境界)に掲載された同名論文の内容を中心に、理論と質的調査の両面から強制送還のもつ「強制性」とそれが人びとにもたらす影響に関する議論が展開されました。前半では、境界研究や強制送還研究の理論や概念を提示し、強制送還を強制移動研究との連続性のなかで捉える視点を示しました。後半では「正当化された強制送還を経験」した人びとやその家族の語りから、国境管理の境界が持つ機能やその法的暴力が及ぼす影響を分析しています。
質疑応答では、EUやアフリカ、アジアなどをフィールドに移民・難民を取り巻く様々な境界について研究をしている参加者と飯尾氏の間でディスカッションが行われました。
報告書と資料は以下をご覧ください。
◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。
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