難民研究フォーラムメンバーとのクローズド研究会を、下記の通り開催しました。
「安全上の懸念」と難民保護:国際的保護の例外をめぐる理論と法制度から考える
報告者:北村泰三(中央大学名誉教授)
開催日:2022年8月8日(月)
オンラインでのウェビナー形式にて開催
入管法改正案は、難民認定制度が犯罪容疑者によって悪用されることを懸念しているが、他方で、改正案による除外関連規定は、人権への配慮よりも犯罪対策:つまり送還や適用除外を優先させる傾向が強くでていると言える。
しかし、ヨーロッパ人権裁判所や国連人権の判例などによって、拷問、非人道的な取扱いのおそれがある国(場所)に向けた送還の禁止は、確立した国際人権法上の原則であるため、そうした送還は禁止されている。(北村氏:報告書から抜粋)
2021年通常国会に提出された入管法改正案には、現行の入管法が定める難民申請者の送還停止効に例外を設け、難民申請中であっても、送還を可能にする規定が含まれていました。具体的には、難民申請者のうち、「1回目の申請も含めて犯罪歴等の一定の属性にある者」と「3回目以上の複数回申請者(保護されるべき相当の理由がある資料を提出した者を除く)」を、送還停止効の例外とする内容でした。法案に対しては、「重大な懸念」を表明した UNHCRを初め、研究者、実務家、支援者からも反対や懸念の声が挙げられました。
結果的に、法案は取り下げとなったものの、出入国在留管理庁が2021年12月21日に公開した資料においても、「退去強制手続の問題」のうち「送還を妨げる理由(法の不備等)」として「①難民認定手続中の者は送還が一律停止(送還停止効)」であることを挙げ「現行法上、難民認定手続中の外国人は、申請の回数や理由等を問わず、我が国で殺人などの重大犯罪を犯した者やテロリスト等であっても退去させることができない」と記述されるなど、送還に応じずに難民申請を行う人の存在と治安やテロの脅威を結びつけて、送還停止効の例外の必要性が強調されています。このことからも、今後国会に提出されると報道されている法案にも、送還停止効の例外の導入が含まれている可能性が高いと考えられます。
本研究会では、まず事務局から昨年の入管法改正案の課題について報告を行いました。続けて、国際法・国際人権法がご専門の北村泰三氏をお招きして、難民条約1条Fの解釈問題を主眼として、国際人権法の関連規定の解釈適用を踏まえつつ、入管法改正案における問題点についてお話いただきました。
報告書と発表資料については、以下をご覧ください。
◉報告書
◉発表資料
◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。
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