研究会「難民認定実務における出身国情報(COI)の意義と実践」報告

研究会

難民研究フォーラムメンバーによるクローズド研究会を、下記の通り開催しました。
研究会の発表をまとめ、報告書を作成しました。また、発表資料も報告者から掲載許可をいただいておりますので、ご覧ください。

「難民認定実務における出身国情報(COI)の意義と実践」
報告者:川口直也(弁護士)、筒井志保(難民研究フォーラム)

開催日:2021年11月9日(火)
オンラインでのウェビナー形式にて開催

難民申請者の出身国情報(COI)や国際情勢に関する情報は、難民認定実務において必要不可欠な情報です。第6次出入国管理政策懇談会・難民認定制度に関する専門部会が2014年に発表した「難民認定制度の見直しの方向性に関する検討結果(報告)」においても、「難民認定判断の重要な基礎となる」と述べられており、「より適正な認定判断の実現のため、申請者のCOIや国際情勢に関する幅広い資料の収集と有効活用」に関する提言がされています。不十分なCOIに基づいた判断が行われた場合、保護すべき難民を誤って不認定処分にし、迫害のおそれのある出身国に送還してしまう可能性があります。

本研究会は、COIを公正な難民認定手続きを行うためのツールの一つと位置付け、日本の現状、国際基準や情報源に注目し、2名の報告者から実践的な報告をいただきました。

筒井志保氏は、「COIとは何か?」と題し、その役割と意義などのCOIの基本的情報を整理するとともに、COIの限界や情報の見方(評価)等について紹介しました。
難民認定における、いわゆる「灰色の利益」の原則とは、証拠で裏付けられない難民申請者の供述も存在することを前提に、供述が信憑性を有すると思われるときは、当該事実が存在しない十分な理由がない限り、申請者が供述する事実は存在するものとして扱われるべき、というものです。日本ではその点の対応が不十分とする判例なども報告されました。

川口直也氏からは、弁護士として担当した、難民不認定の地裁判決が高裁で覆った勝訴事例を取り上げながら報告が行われました。裁判所に提出したCOIに係る様々な証拠や、本訴における立証活動の内容、COIの取扱いに関する地裁と高裁の差異など、実践的かつ具体的にご紹介いただきました。

本研究会には、難民認定実務に携わる難民審査参与員を含めた研究者や実務家の方など51名(事務局含む)が参加しました。

質疑応答では、難民認定における申請者の供述の裏付けに関する質問に対し、川口氏は「日本の、申請者本人が頑張らないと認定が得られない、参与員の方が頑張らないと(情報が不足していて)判断に不安があるという現状が一番の問題」で、庇護の制度として機能していると言えるのかと問題提起しました。
そのほか、実務を踏まえた経験や専門的な視点から議論が交わされ、様々な論点が提示されました。

報告書 

発表資料

◆難民研究フォーラムメンバーについて
本研究会は、基本的にメンバーを対象にして、年3~4回程度開催しております。
メンバーへのご関心のある方は、こちらよりご覧ください。

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