「特集論文」の募集 – 難民研究ジャーナル16号:難民保護の「危機」と展望

難民研究ジャーナル

難民研究フォーラムでは、『難民研究ジャーナル』第16号(2027年3月発刊予定)に掲載する「特集論文」を募集します。

16号の特集テーマは「難民保護の『危機』と展望」です。

難民条約とUNHCRを中心に構成されている国際的な難民レジームは、米ソの冷戦構造など大国の政治情勢の影響を受けながら、同時に難民条約以降に採択された国際人権諸条約の展開に呼応する形で、地理的な範囲や活動範囲、保護や支援対象が拡大していきました。また、国際難民法の解釈をめぐる議論の深化、UNHCRや各国におけるガイドラインの制定などを経て、国際的に難民を保護・支援する枠組みを形成してきました。

他方で、難民レジームについては、その実効性や成立過程、実質的な機能をめぐり、「難民の保護のため」ではなく、「国家の都合」によって、難民を管理したり、国家の領域から排除したりする装置として運用されてきたことは先行研究によって批判的に検証されています1。難民レジームが国民国家体制のうえに成り立っているという制約から、国境を越えて避難する人を保護する枠組みはこれまでも十分に機能してこなかったと考えられます。

本特集企画時である2025年12月現在、第二次トランプ政権の誕生により、アメリカ国内のみならず、国際的な難民保護体制が大きな混乱に直面しています。一国の政治情勢の変化が、世界的な規模で難民の保護や権利保障の問題に波及している状況は、既存の国際難民レジームの脆弱性を象徴する出来事といえるでしょう。アメリカによる拠出金の停止により、実質的な保護や支援を提供する活動の継続自体が脅かされてしまっています。本特集は、国際的なレベルで難民保護が「危機」に追い込まれる現状に対する問題意識にもとづき企画しました。こうした問題意識から、本特集では、まずアメリカに目を向け、難民レジームの形成におけるアメリカの立ち位置、アメリカの内政が国際的な難民保護に及ぼす影響、アメリカ国内の難民を取り巻く状況の変化、国内外で活動する市民アクターなど、アメリカを起点とする様々な政治的・社会的なテーマを横断的に捉えることを目指します。

とはいえ、第二次トランプ政権下のアメリカが「危機」的な状況を深刻化し、より広く可視化するきっかけになったことは間違いないものの、前述の先行研究が示す通り、難民保護をめぐる「危機」は新しい事象ではありません。難民の保護をめぐる状況は各地域や国の法制度や政治・経済・社会的な状況などが複雑に絡み合って構成されており、当然ながらアメリカの影響のみで実態を説明することは困難です。また、難民にかかわる国際的なレジームは、難民を保護・支援する難民レジームだけでなく、安全保障や人の移動、開発や人権など複数の政策領域にまたがっていることを踏まえれば、今日の難民保護を考えるうえではこうした領域も視野に入れた議論が求められると考えます。こうした点を踏まえ、本特集の射程には、国際的な難民をめぐる政治的な動向が、各地域や各国における難民保護に実際に及ぼしてきた影響への分析も含んでいます。また、こうした政治の影響によって難民保護が翻弄される中で、主体的に難民保護に取り組む市民社会の活動など、必ずしも国家の枠組みに捉われない議論を歓迎します。

本特集では、「難民保護の『危機』と展望」をテーマに掲げることで、特集を通じて、現在の難民レジームがどのような国際・国内政治の文脈の中で形成され、変化してきたのか、その中でどのような人や権利が保護の対象とされ、あるいは排除されてきたのかなどを取り上げ、現行の難民レジームの課題や展望、今後より「難民のため」の難民レジームの構築を目指すために必要な議論を喚起したいと考えています。

上記の内容に留まらず、特集テーマにかかわる論文の投稿をお待ちしております。

※査読の結果、論文として掲載可となった場合でも、その内容や特集全体のバランスなどを踏まえて、通常の「投稿論文」として掲載する場合があります。予めご了承ください。

  • 締め切り:2026年5月末日(査読を経て8月末日を目途に掲載可否を通知します。掲載可となった場合でも一部修正を依頼することがあります。)

特集テーマへの投稿ではない投稿論文も募集しております。詳しくはこちらより。
※その他、報告(1万2,000字以内)の投稿にご関心のある方は、難民研究フォーラム事務局までご連絡ください。 info@refugeestudies.jp

  1. 例えば、日本語での先行研究として、阿部浩己『人権の国際化ー国際人権法の挑戦』現代人文社、1998年、149~205頁;小泉康一『グローバル時代の難民』ナカニシヤ出版、2015年;駒井洋・人見泰弘『難民問題と人権理念の危機 国民国家体制の矛盾』 明石書店、2017年;山岡健次郎『難民との友情――難民保護という規範を問い直す』 明石書店、2019年;『難民レジームと当事者性ー「保護される客体」からの脱却』明石書店、2025年。[]
タイトルとURLをコピーしました