難民研究ジャーナル13号 「特集論文」の募集

難民研究ジャーナル

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難民研究フォーラムでは、難民研究ジャーナル13号(2024年2月頃発刊予定)に掲載する「特集論文」を募集します。

13号の特集テーマは「難民と境界」です。

難民は庇護を求める移動の過程や庇護国において、様々な境界に直面します。難民条約に基づく難民として認められ、国際的な保護を受けるために乗り越えなければならない国境をはじめ、難民を排除/包摂する様々な境界を多角的に分析することを通じて、自明視されている境界の存在そのものを揺さぶり、問い直すような議論を喚起したいと考えています。様々な研究分野、研究視角や分析手法からのご応募を期待しています(詳しくは、下記の「特集主旨」をご参照ください)。

  • 締め切り:2023年5月末日(査読を経て8月末日を目途に掲載可否を通知します。掲載可となった場合でも一部修正を依頼することがあります。)

査読の結果、論文として難民研究ジャーナル掲載に値するものの、内容が特集主旨と合致しないと判断された場合、通常の「投稿論文」として掲載する場合があります。予めご了承ください。
特集テーマへの投稿ではない投稿論文も募集しております。詳しくはこちらより。
※その他、報告(1万2,000字以内)の投稿にご関心のある方は、難民研究フォーラム事務局までご連絡ください。

お問い合わせ先:難民研究フォーラム事務局(info@refugeestudies.jp)

特集主旨

「難民と境界」

社会には、多種多様な「境界」が存在する。難民も、保護を求める移動の過程や逃れた場所での生活の中で、様々な境界に直面している。本特集は、難民の前に存在する境界を可視化すること、あるいは境界の機能などをひもとくことを通じて、難民と「私たち」を隔てる境界そのものを問い直すことにある。

難民が直面する境界として、まず初めに想起されるのは「国境」であろう。難民条約上の難民としての保護を受けるためには、国境という境界線を越えて、「国籍国の外にいる」ことが求められる。このことは、当然ながら、国境を越える移動をしない人(できない人)は迫害や人権侵害のおそれに直面していないということを意味しない。それにもかかわらず、現在の国際難民レジームが国境を越えているか否かによって、ある人が国際的な保護を享受できるかという生命や人権に関わる線引きを生み出し、正当化する基準としていることは、主権国家体制の構造上の要請とはいえ、批判的視点をもって捉えられるべき点だろう。

国境は、難民とそれ以外の避難者を区別する線であると同時に、移動の過程で乗り越えなければならない壁でもある。20世紀前後に確立された国家による広範な国境管理権限を背景に、特に1980年代以降、日本を含む北側諸国は国境管理を厳格化し、その壁を迫り上がらせてきた。庇護希望者を含む、外国人の入国を管理・制限するための施策は多元的に展開されており、庇護を求める人々の国境を超える移動そのものを抑制しようとする動きが見られる。こうした保護の対象者とそれ以外を隔てる境界や、庇護空間の内側への移動を抑制(あるいは促進する)するような動きは、国内避難民の移動においても同様にある。

難民が直面する境界は、保護を求めて乗り越えたその内側にも広がっている。受け入れる側(「私たち」)と難民(かれら)を区別し、隔てる境界は枚挙にいとまがない。例えば、難民キャンプをはじめとする難民を支援し、包摂する空間は、同時に難民を特定の場所に閉鎖し、排除する境界としても作用している。また、受け入れ国の一般市民と同じ空間で生活する難民であっても、国籍などに紐づく社会保障諸制度における排除/包摂をはじめ、制度的に引かれた様々な境界に直面する。また、法制度によって明確に規定されたものだけでなく、日常生活の中にも「私たち」と難民を隔てる境界は存在するだろう。

さらに、難民は単一で同質な人々の集団ではないため、難民の間にも様々な境界が存在する。民族や出身国、宗教、ジェンダー/セクシュアリティ、近年指摘されている「難民の階層化」の基準となる難民の統合可能性なども含めて、様々な境界線が多元的に、時に折り重なって存在している。さらに言えば、境界とは国際社会や受け入れ国が作り出し、難民に押し付けるものでは必ずしもなく、時として両者の関わりの中で生々流転する。

そもそも境界自体は固定的なものではなく、政治的・社会的な影響を受けて変化するものである。また制度的には同一であったとしても、難民にとっては「時間」とともにその境界の意味や役割、機能が変化していくこともある。

難民・強制移動研究においては、潜在的な難民を含む国家が望まない外国人を国境の外に押しとどめようとする政策の分析をはじめ、国境に代表される境界と難民に関する研究が蓄積されており、日本においても法学、政治学、地理学、社会学などを中心に研究が行われている。しかし、編集委員会の知る限り、これまでに取り上げられて論点は、大雑把に言えば、欧米を始めとする国々の国境管理政策に関する法学、政治学または社会学的な研究、アフリカや南アジアの難民キャンプなどを対象に難民の視点から境界を分析する人類学的な研究、主にヨーロッパにおける国境内部の境界を分析する社会学的研究に集中している。また、どのテーマに関しても論文の数は限られており、日本における難民・強制移動研究において、国境を始めとする様々な「境界」に焦点を当てた議論は十分にされてきたとは言えないのではないか。

難民が直面する境界とは、誰が、どのように引いた線なのであろうか。その境界は、どのように正当化されうる(若しくは正当化されない)のであろうか。また、難民はその境界をどのように経験するのであろうか。これらの問いについては、より多角的な視点からの研究が求められている。

このような状況を踏まえて、本誌において特集として「難民と境界」を取り上げることにより、主権国家体制において自明視されている国境をはじめとする境界の存在そのものを揺さぶり、問い直すような議論を喚起したい。

※上記の中で例示した「難民と境界」に関する研究テーマや問いは、特集の主旨を明確にするために示したものであり、そのほかの論点を取り上げる論文の「特集論文」としての応募を妨げるものではありません。むしろ、編集委員会が想定していない、新たな視点・手法での研究を強く奨励しています。

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