難民研究ジャーナル11号 「特集論文」の募集

難民研究ジャーナル

2020年9月14日
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難民研究フォーラムでは、難民研究ジャーナル11号(2022年2月発刊予定)に掲載する「特集論文」を募集します。
特集テーマは「難民保護再考」です。
11号が発刊される2022年は、日本の難民行政開始から40年目の節目の年です。この間、日本を含めて世界における難民を取り巻く状況は大きく変化しました。難民保護に関する法制度とその運用、また難民政策や支援実務に関する分析を通じ、日本における難民保護の現状を見つめなおし、今後目指すべき方向性を考える契機としたいと考えています(詳しくは、下記の「特集主旨」をご参照ください)。
様々な研究分野、研究視角や分析手法からの応募を期待しています。

・投稿規定:難民研究ジャーナル投稿規定に準ずる。(本文の長さ:2万字以内)

・締め切り:2021年5月末日(査読を経て8月末日を目途に掲載可否を通知します。掲載可となった場合でも一部修正を依頼することがあります。)

※特集テーマ「難民保護再考」に関連する論文を広く募集しており、研究対象が「日本の難民保護」でない研究も歓迎します。ただし、査読の結果、論文として難民研究ジャーナル掲載に値するものの、内容が特集主旨と合致しないと判断された場合、「投稿論文」として掲載する場合があります。

・お問い合わせ先:難民研究フォーラム事務局(info@refugeestudies.jp)

特集主旨

1951年に「難民の地位に関する条約(以下、難民条約)」が発効されて以降、世界の難民を取り巻く状況は大きく変化してきた。世界では難民が増え続け、2019年には2040万人が難民として庇護国やUNHCRの保護対象者となっており、その他にも420万人が庇護を求めて出身国から逃れている。そのような中、条約締約国における難民認定の根拠となる諸原理の解釈は深化し、難民保護レジームは発展を続けてきた。

国際的難民保護レジームは、国連での難民保護支援の実践と条約適用監督責務を持つUNHCRが、条約締約国とともに難民認定基準の明確化や難民条約の解釈の規範を構築し、それを受けて締約国が国内法を整備することで確立されてきた。また、難民条約発効以降に制定された拷問等禁止条約をはじめとする国際的人権条約やその他の地域的人権条約により、庇護対象が拡大され、保護の認定基準も明確化されてきた。90年代末以降は、主に内戦等の紛争から逃れて国境を超える人々に対する保護を、条約締約国の多数の国が実践をする中で「補完的保護」という新たな概念が登場し、各国内で制度化や実践がなされ、新たな難民保護レジームが構築されてきた。

日本は「難民問題に対するわが国の国際協力を一層促進する」ことを掲げ、1981年に難民条約に加入、翌82年には議定書加入とともに「出入国管理令」を改正して「出入国管理及び難民認定法」を制定し、国内で庇護を求める難民に対する個別審査を開始した。条約加入の契機となった閣議了解によるインドシナ難民の受け入れをはじめ、条約加入以前にも、国内には迫害から逃れてきた人は少なからずいたが、その判断は入国管理行政の裁量で行われていた。条約締約国となり、難民の認定手続きが法制度として整備されたことにより、日本でも難民保護体制が構築されることが期待された。40年近くにわたる難民行政の中で、度重なる出入国管理に関する法改正が行われてきた中、日本の難民保護制度の課題改善に向けて、2005年の難民認定手続きに関する初めての法改正施行をはじめ、その充実の検討と取り組みはなされてきた。また、2010年から「第三国定住」パイロット事業が開始されるなど、受け入れ数は限定的ではあるが、新たな難民保護への取り組みも行われている。

しかし、日本の難民保護体制は、世界で構築されていく難民保護レジームとともに改善を重ねてきたとは必ずしもいえない。難民申請者数が増加する中、難民として認定をされた者(条約難民)の人数は一桁の年もあり、認定数や認定率の少なさは各国政府、国際機関、国内外の研究者や実務家などから批判を受け続けている。指摘されてきた改善点は、低迷を続ける難民認定数・認定率に留まらず、国際的な難民保護への協力・遵守、難民認定手続における適正手続きの保障、過度な立証責任の緩和、難民認定機関の独立性の担保、長期化する難民認定審査の改善、難民申請者の法的地位および生活保障、社会統合支援策の拡充など多岐に渡っている。2012年以降、日本の難民申請者は顕著に増加し、2016年以降は申請者が年間1万人を超えたが、条約難民の認定数には大きな変化が生じず、現在においても年間二桁に留まる。人道配慮による在留許可で庇護の対象となった人数は2009年以降、むしろ減少傾向にある。

近年、世界的な難民急増を受け、受け入れを担っている庇護国、中でも欧米諸国を中心に難民政策や入国管理政策の厳格化が顕在になっている。日本においても難民制度が厳格化される傾向にある。難民申請者の増加を受け、2015年「真の難民の迅速かつ確実な庇護を推進する」ことを趣旨とする「難民認定制度の運用の見直し」が実施されたが、運用の見直しは、難民認定制度の誤用・濫用者対策としての側面が強く、難民申請中の就労資格の厳格化などにより、国内の難民申請者を取り巻く状況はさらに厳しくなったといえる。また、2019年には、出入国管理政策懇談会下に収容・送還に関する専門部会が設置され、難民申請者を含む外国人の収容と送還に関する提言が発表されたが、難民条約の礎石であるノン・ルフールマン原則に反する可能性のある、難民申請者の送還を含む法改正の検討が報じられており、運用の見直し趣旨であった難民保護とは真逆の姿勢が顕在化している。

日本の難民保護が課題を抱える一方、市民セクターにおいては、70年代後半以降、日本国内のインドシナ難民支援に関わる団体が生まれ重要な役割を果たしている。また90年代後半以降は、日本に庇護を求めて難民認定手続きを行う難民申請者や、認定された難民に対する支援を行う団体が台頭をしてきた。難民への法的支援を担う弁護士が全国難民弁護団連絡会議を設立(1997年)し、難民支援協会(関東/1999年)、RAFIQ(在日難民との共生ネットワーク)(関西/2002年)、名古屋難民支援室(東海/2012年)など、多数の地域に行政の保護を受けられない個々の難民への生活支援や法的支援を行う団体が設立されてきた。また市民セクターには、難民申請者・難民の権利保障に向けた法制度の構築や適切な運用、政策の改善を目指してアドボカシーを行う団体も生まれ、日本の難民保護に少なからず影響を与えてきた。

難民研究においても、国内外の難民・難民問題への関心は高まり、難民研究や強制移動に関する研究は広い分野で広がりを見せてきている。難民研究ジャーナルにとどまらず、移民政策学会、国際政治学会など研究誌においても難民に関する論文や発表など2010年以降多くみられるようになった。

しかし、日本の難民行政に関して、法制度を含む難民政策、難民支援の実態を俯瞰し、また40年間を貫く視点で分析する難民研究は不足している。社会学や医学、社会福祉学、政治学など多様な分野にまたがる難民保護に関する研究が、これまで十分には行なわれてきておらず、日本において難民が直面する問題や困難が可視化されていない可能性は否定できない。また、難民行政に関わる難民支援者も、日本の難民行政を十分に振り返る機会がないまま邁進してきた。つまり、研究と実務どちらにおいても、これまでの40年にわたる難民行政の総括がなされていないと言えるのではないか。

難民研究フォーラムは、この特集を通じて、多様な研究分野の研究者と実務家それぞれの視点から日本の難民行政を総括し、改めて「難民保護」を考える機会としたい。これまで40年間の難民受け入れの歴史学を、学問横断的に複合的な視点を通して立体的に考察することはできないだろうか。過去を振り返り、現状を認識し通過点とすることで、今後目指すべき方向性を考える契機とすることがこの特集の狙いである。

研究テーマの例

以下、特集テーマ「難民保護再考」に沿った研究として、編集委員会が想定している研究テーマを示す。ただし、例示された研究テーマは、特集の趣旨をより明確化にするために作成されたものであり、該当しない論文の「特集論文」としての応募を妨げるものではない。むしろ、編集委員会が想定していない、新たな視点・手法での研究を強く奨励するものである。

  • 日本、または世界での難民保護の歴史的変遷に着目した研究
    (難民保護は向上しているのか/難民保護を阻害している根本的な要因とは何か、など)
  • 難民保護に関連する法制度及び実務に関する研究
    (難民条約とUNHCRを中心とする難民保護体制は機能しているのか/日本および他国、またはUNHCRによる難民認定実務の問題点は何か、など)
  • 既存の難民保護制度やそれに関連する国際的慣習そのものを問い直す研究
    (なぜ、国家には他の外国籍者ではなく難民を保護する義務があるのか/難民の社会統合はなぜ難民保護にとって必要なのか/なぜ難民申請者を収容してはいけないのか/難民キャンプでの難民保護は正当化されるのか、など)
  • 難民条約以外の庇護制度、仕組みに関して分析した研究
    (「補完的保護」、「ニューヨーク宣言」、「難民に関するグローバル・コンパクト」に代表される近年の国際的取り組みに関してその役割や効果について、難民を移住労働者や留学生として受け入れることは、難民保護にとってどのような意味を持つのか、など)
  • 難民保護における民間アクターの役割に着目した研究
    (市民社会、企業、アカデミアの果たす役割とは何か、など)
  • 難民保護の国際的な責任分担に関する研究
    (国外の難民支援に対する資金援助は、難民を国内に受け入れないことを正当化するのか、など)
  • 難民に焦点をあてた研究
    (難民の行為主体性、自主性、自立性は、日本、または世界における難民保護に対してどのような影響を及ぼしたか、など)
  • 難民の表象に関する研究
    (メディアによる難民表象は、日本または他の国における難民保護にどのような影響を与えてきたか、など)
  • その他、「難民保護と宗教」、「難民保護とジェンダー及びセクシャリティ」、「難民支援や保護の規範や価値を問う」など、上記の研究テーマに該当しないテーマであっても、特集主旨に沿ってしていれば「特集論文」として掲載する可能性がある。

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